開業までの流れ
医院・クリニックの開業は、思い立ったらすぐにできるというものではありません。半年~数年という時間をかけて準備を行う、一大プロジェクトです。コンセプト作りから資金調達、物件選び、医療機器・薬品・什器等の調達、物件の工事、広告・ホームページ作成、スタッフの採用、各種手続きといった数多くのタスクをすべて自分でこなさなければなりません。以下に開業までの大まかなスケジュールをまとめました。
計画をしっかり立てて一つひとつ着実に実行していかないと、とても間に合いません。また、戦略がないまま準備を行えば、たとえ開業をしたとしても失敗するリスクが極めて高くなります。
実行内容のポイント
開業準備スケジュールをご覧いただき、あらためて医院・クリニックの開業までにはやるべきことが山のようにあることが実感していただけたかと思います。これらはすべて今後の医院・クリニック経営の成否を左右するので、一つひとつが非常に重たいものとなります。
逆に言えば、準備さえしっかりしておけば、医院・クリニックの経営や運営の難易度は格段に下がり、開業医としての成功確率が高まるはずです。
ぜひ以下のポイントを押さえていただき、まずは計画と戦略を考えてみましょう。
ポイント
- 自分の想いを明確にする
- どのようなドクター人生を歩みたいかを考える
- 長期的な視点でコンセプトと計画を立てる
まずは医院・クリニックの事業計画やコンセプトを策定します。いちばん大切なのはドクターの方の想いです。「患者さんにどのような医療を提供したいか?」「どのような医院・クリニックを創りたいか」「どのようなドクター人生を歩みたいか?」という想いを明確にすることで、自ずと事業計画やコンセプト、あるいは商圏や物件選びも定まってきます。
事業計画とコンセプトは少なくとも開業予定時期の6ヶ月前までには固めておきたいタスクです。
診療圏調査(~6ヶ月前)
- 需要が高い診療圏に医院・クリニックを開業する
- 一次診療圏と二次診療圏を考慮する
- 想定診療圏の人口や年齢分布、競合状況などの調査を行う
診療圏とは医療を提供する範囲のことを指します。来院患者の60%は医院・クリニックから半径500m内のエリア(一次診療圏)から、20%は半径1km以内のエリア(二次診療圏)から来院します。そのため、「どこに医院・クリニックを開業するか?」が非常に重要となってくるのです。想定する地域の人口や年齢分布、競合状況などをしっかり調査して診療圏を設定する必要があります。
医院・クリニック開業相談センターでは、無料相談をご利用いただいた方を対象に、特典として無料で診療圏調査を実施します。
物件契約(6ヶ月~4ヶ月前)
- 立地や広さ、コストなどを総合的に判断する
- 物件の形態についてメリット・デメリットを比較して検討する
- 医院・クリニック開業の知見がある専門家に相談する
物件選びも医院・クリニックの開業の成否を分ける重大な要素です。「患者が通いやすい立地にあるか?」「設備を収容できるだけの十分なスペースがあるか?」「コストが予算内に収まるか?」など、さまざまな事柄を考慮しなければなりません。「購入するか賃貸にするか?」「一般的な物件にするか医療モールやPFI物件にするか?」といったことも、それぞれのメリット・デメリットを比較しながら検討する必要があります。
一般的な不動産会社をまわってもなかなか医院・クリニックの開業に適した物件を提案してもらえない可能性があります。医業に関する知見がある専門家に物件選びをサポートしてもらったほうが安心です。
内装工事や医療機器・薬品・什器等の搬入があるため、少なくとも開業4ヶ月前までには物件を調達する必要があります。
内装工事(6ヶ月~2ヶ月前)
- 信頼できる設計会社・工事会社を選んで依頼する
- さらに細かくスケジュールを決定して実行する
- 業者と十分にすり合わせを行い間取りやデザインなど決める
物件が決まったら内装工事を行います。やはりこちらも医院・クリニック経営の成否を大きく左右します。業務が円滑にできて患者さんの移動がしやすい動線の確保やバリアフリー対応、コンセプトに合ったデザイン、患者さんに安心感を与える色使いなどを設計会社と打ち合わせを重ねながら決めていく必要があります。
内装工事で重要なのは業者選びです。ドクターの方の想いを汲み取ってくれてそれを設計に盛り込んでくれる設計会社、納期通りに工事を完了してくれる工事会社を選びましょう。
特に内装工事は一朝一夕でできないため、さらに以下のような細かいスケジュールを組んで動いていく必要があります。
開業日から換算 | 6ヶ月前 | 5ヶ月前 | 4ヶ月前 | 3ヶ月前 | 2ヶ月前 |
---|---|---|---|---|---|
実行内容 | 設計会社決定 | 設計と図面 | 工事会社決定 | 着工 | 工事完了 |
融資(5ヶ月~4ヶ月前)
- 説得力がある事業計画書を作成する
- 事業計画はシビアに策定する
- 専門家のアドバイスを受ける
開業や医院・クリニックの経営・運営に必要な資金を調達します。銀行から融資を受ける際には事業計画書を作成する必要があります。「どのような事業を行いたいのか?」「どれくらいの収益が見込めるのか?」「融資を返済していけるのか?」を、具体的なデータも交えて説得できる資料を作成しなければなりません。また、金融機関への説明や交渉も必須となります。
事業計画が甘いと融資の審査に落ちるか、融資額が下がってしまう可能性もあります。専門家からのアドバイスも受けながら、事業計画書の作成や金融機関との交渉に臨みましょう。
医療機器・薬品・什器等(6ヶ月~開業日まで)
- 必要な物品をリストアップする
- 相見積もりを取って比較する
- 必要なもののみを調達する
開業する医院・クリニックで使用する医療機器や薬品、什器、その他備品を調達します。
まずは必要となるものをリストアップしておきましょう。また、準備をしている途中でそれとは別に必要になるものが出てくる可能性もあります。
いかに賢く物品調達するかによって開業コストが大きく変わってきます。特に医療機器は高額になりますので、必ず複数業者から相見積もりを取りましょう。業者に言われるまま購入してしまうと、高額なものを掴まされたり必要のないものまで買わされてしまったりするリスクが高くなります。
広告・ホームページ(6ヶ月~開業日まで)
- ネット集客とアナログ集客の両方を行う
- 特に医院・クリニックのホームページ制作は必須
- スキル・知識がある専門家に相談する
集患を行う上では広告やホームページ作成も必須です。特に今は誰もがスマホで情報を検索する時代なので、ホームページは必ず作っておきましょう。その他必要に応じてインターネット広告やポータルサイトへの登録、あるいは電柱広告や看板、チラシや新聞広告などの紙媒体でも宣伝を行います。
広告やホームページ制作・運用をご自身で行うのは大変です。必要に応じて外部の専門家に相談しましょう。特にネット集客は専門的な知識やスキルが必須です。当センターでも集客のプロをご紹介することが可能です。
スタッフ募集~研修(4ヶ月前~開業日まで)
- 開業までに研修を完了させておく必要がある
- ドクターの想いやスタンスに共感してくれるスタッフを採用する
- 求人雑誌やサイト、紹介、ホームページなど、さまざまな手法を活用する
スタッフはただ採用するだけでなく、開業までに研修を行って、一通りの業務ができるような状態にしておく必要があります。また、医院・クリニックを成長させるためにはスキルや知識があって、なおかつ運営方針やドクターの想いやスタンスに共感している人材を採用することが大切です。
スタッフの募集には求人雑誌への掲載やハローワークや就職・転職サイトの活用、紹介など、さまざまな方法があります。ホームページを作成して採用募集だけ先に公開するという方法も効果的です。
行政手続き(1ヶ月前~開業日まで)
- しっかりとスケジュールを立てる
- 事前に要項を把握して対策をとる
- 期限までに正確な手続きを行う
医院・クリニックを開業する際には保健所申請・検査や社会保険局への申請、公費負担申請、労災指定申請、防火管理責任者資格の取得など、行政機関に対してさまざまな手続きをおこなわなければなりません。
手続きを円滑に進めるためには、正確かつ迅速な申請書類の作成が不可欠です。検査に立ち会う必要があるため、スケジュール管理や対策も欠かせません。
こちらも必要書類や要項などをしっかりと下調べを行い、場合によっては専門家のアドバイスを受ける必要があります。
医師会入会(2ヶ月前~開業日まで)
- 医師会への加入は義務ではない
- 医師会に加入するメリット・デメリットを考慮して判断する
- 開業前までに医師会へ加入手続きを行う
医師会とは医療活動の支援や地域医療の発展などを目的とし、医師によって結成されている団体です。医師会の加入は義務ではありませんが、入会することで情報を得られる、他の医師との人脈ができる、検診や予防接種などの受託事業が行える、賠償責任保険に加入できるなどのメリットがあります。一方で、入会金や会費などの費用がかかる、医師会の業務も行わなければならず負担が増えるなどのデメリットもあるため、これらを考慮して加入するかどうかを判断することが大切です。
医師会に加入するには開業日までに手続きを行います。また、医師会に所属する医師へのあいさつ回りも必要になる場合があります。
医療物件・医療用地
医院・クリニックの開業準備の中でも特に重要なのが物件選びです。当センターでは開業支援の一環として物件紹介も行っているため、ドクターの方が理想とする医院・クリニックを実現できる・集患につながる物件のご紹介が可能です。
開業失敗事例
準備をして開業をしても、医院・クリニックの経営・運営に失敗されてしまうドクターの方も少なくありません。大切なのは先人と同じ轍を踏まないことです。事前によくある失敗事例を学んでおきましょう。
お問い合わせ
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※企業様からの医療用地や医療物件にご提携・ご紹介も歓迎しております。